「根本的原因とは第一次的な直接な素因であって病源そのものである。
普通一般に原因と考えられているものの多くは二次的なもので、たとえば人が感冒に罹るとその原因は急に寒冷の空気に遭遇したか、あるいは精神的肉体的過労のためであると考えられやすいが、この場合それらは直接の原因ではなくて、第一次的なものとしては本人の寒冷に対する抵抗力が充分でなかったこと、または平常より病床につかなくても身体のいづれかに機能的(時には器質的)疾患が潜在していたためである。」(『手技整形学』より)
『手技整形学』は1958年に初版発行の書物なので、使われている言葉や表現が古く感じるかもしれません。
しかし、そこに書かれている内容は古びることのない、いまにも通じる普遍的なことが多いです。
そもそも、疾病に罹患する、病気になるとはどういうことかということを説いた文章ですが、
たとえば、インフルエンザに罹ると、今では「ウイルスが…」「過労、ストレスが…」というところに原因を着地させることが多いように思いますが、それは二次的、副次的な要因であり、第一次的な、より原初的な要因は本人の抵抗力の減衰、または何かしらの表面に出ない疾患があるからだ、と云っています。
「…そもそも、疾病というものは病源物または病因をなすものと身体的組織の抵抗との戦闘を指しているものにほかならぬから、たとえ病源物が身体に侵入するとか、病因をなすものに接触しても、それに応ずる自己防衛力即ちレジスタント・パワーなるものが強大であると、疾病に罹らず回復する。
また、一旦は病気になったとしても抵抗力を増進し強固にする工夫を講ずれば、疾病は遂に敗北して大病にならずに済む」(『手技整形学』より)
疾病とは、外から来た病原体や病因をなす何かとの戦闘状態だ…だから、それに対抗しうる防衛力を自らに備え、たとえ疾病に罹患したとしても大病にならぬように普段からしておくこと。
こう書かれると「当たり前」と思うかもしれませんが、このことを本当に理解しておけば、昨今のような「ウイルスが…」とか「マスクが…」みたいな話がどれほどズレているのか、わかります。